メディアを通して文化を見る
情報
著者:岩本茂樹
発行:2018年12月10日
目次
- 社会学はあなたの身近にある
- 私のモニュメント
- 断ち切れない恋
- 思いが現実を創る
- 受験の悪夢
- 男らしさの揺らぎ
- 文化がつくりだす性差
- 幻影がつくる現実
- つくられる記憶
- 映像と文学による啓蒙への批判
- 『海の上のピアニスト』からメディア論へ
書評などなど
皆さんは映画やアニメ、小説といったメディアを楽しんでいるだろうか。そんなことを言っているブログ主は、本ブログ以外にも『工大生のメモ帳』というラノベや漫画の感想をまとめたブログを運営している。
いわゆるエンタメと呼ばれる作品群は、時代背景というものが色濃く反映される。当時の男女観や社会観を知るには、その当時に流行っていた映画や小説を読めば良いということを、社会学という学問として真面目に取り組んだのが本著である。
昔の作品を読んだ時、観た時、ただ「面白かった」という感想が残るのではない。今を生きている自分と、当時を生きていた人々の周りにある社会の違いを感じられるようになっていく。
例えば。
第二章『私のモニュメント』では、1995年という意外と最近になって出来上がった概念、ストーカーについて語られていく。筆者自らの過去の恋愛体験を踏まえ、「これってストーカー?」という命題についてゆっくりと解きほぐしていく。
ちなみに筆者の過去の恋愛体験というのをざっくりとまとめると、『電車で見かけた年下の女の子を好きになったため、いきなり話しかけてデートの約束を取り付けるもドタキャンされる』というもの。
ドタキャンをした女性の気持ちや言い分については分からない。何か用事があったのかもしれないし、誘われた時は断ったら何かされそうで怖かったから頷いたが、いざ行くとなると怖くなったから行かなかったかもしれない。その理由について、筆者は聞いていないからだ。
そんな一連の行動は、果たしてストーカーといえるだろうか。
それについて考えるために、過去の名作達が引用される。ブログ主が読んだことがある作品としては『レ・ミゼラブル』が挙げられていた。こちら1862年というかなり昔に書かれた作品であるが、2012年には映画化されており、今なお多くの人に愛される名作といえる。
言わずもがな名シーンの多い作品の中で取り上げられたのは、リュクサンブール公園でのマユリスの行動だった。マユリス(21歳)が、リュクサンブール公園のベンチに座って毎日本を読んでいるコゼット(15歳)に恋をしてお近づきになるために、ベンチの周りでウロウロしたのだ。
しかも彼女が落としてベンチに置きっぱなしにしたハンカチの匂いを嗅いだり(なおコゼットのものだと思ったのは勘違いで別人のもの)、彼女の家の場所を知るために後をつけたりといったことをしている。今、このシーンを読んだらストーカーとブログ主だって思うが、ストーカーという概念がない当時の人はどう思うだろうか。
長々とストーカーについて語ったが、メディアから読み取れる当時の男らしさとその変容についてや、男女の性差についてなど、ただ作品を読んでいるだけでは気にしなかった視点で語られていく。
本著を読んでいくと、作品のみならず社会を生きていく時、何かと向かい合っていく時に、一つの視点が追加されるような感覚になる。そうして『思考力を磨く』に繋がっていくのではないだろうか。