AIに何ができて、何ができないか
情報
著者:松尾豊
発行:2015年8月8日
目次
- 広がる人工知能――人工知能は人類を滅ぼすか
- 人工知能とは何か――専門家と世間の認識のズレ
- 「推論」と「探索」の時代――第1次AIブーム
- 知能を入れると賢くなる――第2次AIブーム
- 「機械学習」の静かな広がり――第3次AIブーム①
- 静寂を破る「ディープラーニング」――第3次AIブーム②
- 人工知能は人間を超えるか――ディープラーニングの先にあるものは
- 変わりゆく世界――産業・社会への影響と戦略
書評などなど
人工知能という言葉が一人歩きし、その単語から連想できる知識だけで人工知能を語ってしまう者は少なくない。そもそも知能とは何かという話すらまとまっていないというのに、人工知能を一言で語り尽くそうとすることがおかしいのだ。
という訳で。
本著は第一章『広がる人工知能』では簡単な導入として、本著ではどういうことを書きたいか? 要は『人工知能は人間を超えるか』という命題にどう向き合うかが記載されている。結論から言えば、「できないはずがない」という風に記載されているが、その結論にどうして至ったかについては、きっちりと本著を読んで理解して欲しい。
その理解のために第二章『人工知能とは何か』から、第六章『静寂を破る「ディープラーニング」』までで、人工知能が作られる歴史について語られていく。人工知能開発には二度ほど冬の時代があり、それを乗り越えていくことで発展を遂げてきた。今はディープラーニングの登場で空前の人工知能ブームであり、もしかしたら人間を超えられるかもしれないという期待が、人々の間にはあるのかもしれない。
たしかに人工知能を実現するための技術の進歩は素晴らしいものがある。
それでも冬の時代がやって来たのには、単純には語り尽くせない理由がある。一番最初に出来た人工知能は、ダートマス会議で公開された数学の証明問題を解いてみせるものだった。その後、たくさん出てきた人工知能と呼ばれるものは、トイプロブレムと呼ばれる単純な問題しか解けないものばかりで、そこに一度限界を感じ、社会から見放されて冬となった。
その状況を打開したのはエキスパートシステムと呼ばれる、人の知識をデータ化してルールを設けて管理させることで、社会に役立てるというものだった。人工知能が金になると分かれば、社会は興味を向ける。単純なものだ。
そうして少しずつ技術は進歩していった。この流れを見ているだけでも、かなり楽しいものがある。
現在は第3次AIブーム真っ只中であり、ディープラーニングと呼ばれる技術が社会を席巻している。しかし、このディープラーニングでは人間を超えられないという風に言われている。
そもそもディープラーニングとは、人の脳が思考するプロセスであるニューロンがモチーフになっている。その考え方を機械学習に組み込み、特徴量から重み付けする過程を自動化するという分かってみれば単純な技術である。
具体的な技術については、行列とか確立とか統計とか色々あるので置いておくとして、結局のところ、やっていることは『データから特徴量を見いだす』ということだ。人間の知能がしていることは、そんな一言で説明できるようなものではない。
そもそも知能とは何かという問いに答えを見いだせていない現状において、知能を作るということは無理であろう。シンボルグラウンディング問題といった問題だってある。そういった課題も本著にはまとめられているので確認して欲しい。
AIとは何かという問いに対し、歴史から学んでいくという意味で本著は短く良くまとまっている。とりあえず一冊読みたいという方にはオススメである。