社会人のメモ帳

忘れたくないことアレコレ

コミュ障のための社会学 書評

コミュ障ですが、なにか?

情報

著者:岩本茂樹

発行:2022年3月25日

目次

  • 「モテるしぐさ」に振り回されて
  • 僕たちは演技している
  • 「自分らしさ」って何だろう?
  • 身体のコンプレックスにさようなら
  • 成熟を求めて
  • 文学は誰のもの
  • 音楽を愛するとは
  • 閉ざされた風景から開かれた風景へ
  • 見えるものが見えない/見えないものが見える

書評などなど

本ブログのタイトルは『社会人のメモ帳』という。その名の通り、今、ブログを書いているブログ主は社会人として働いていて、それ相応の悩みというものを抱えながら生活している。

本著は他人とのコミュニケーションをする上で発生する悩みを、社会学という立場から読み解いていき、悩みの正体を探っていくという内容になっている。

また、社会学という学問のフィルターを通すと聞くと、本著の内容はお堅いものなのではと思われるかもしれない。しかしながら中で描かれている内容は筆者の実体験などを交えて快活に描かれており、学問というよりもエッセイという方が近しいような章もあったりと読みやすさが重視されているように感じた。

本著のタイトルも『コミュ障のための社会学』という気になるタイトルになっている。コミュ障を極めているブログ主のような人間にとって、悩みについて真正面から向き合う良い機会になったし、コミュ障ではないという人にとっても、社会学という学問の入り口としては丁度良いのではないかと思う。

 

本著の構成として、章の始めにコミュニケーションをする上で抱える悩みが書かれ、その一つの解決策(向き合い方)が簡単に提示されている。その後、社会学を通してどのようにその解決策が導かれたかを、具体例などを用いてまとめられている。

例えば、第一章『「モテるしぐさ」に振り回されて』では下記のような感じだ。

「イケてない ”陰キャラ” の自分……『断られたら嫌だな』と思って ””好き避け” をしてしまう」

「感受性が強いあなた 逆に相手のしぐさの文法を読み取って人間観察を楽しみましょう」

上が悩みで下が提示された向き合い方だ。「どういうことだ?」と気になって先を読み進めていくと、そもそも時代や属する社会によって、動きや仕草が相手に与える印象が変わっていくことが分かっていく。

モテる仕草の一例として、女性が髪をかき上げて結ぶシーンが上げられている。「分かる……」と頷いた人もいるかもしれないが、コロナ全盛でマスク社会となっている昨今では、また違った仕草がモテ仕草になっているのではと推測できる。国が変わればまた違う結果になると思われる。

モテ仕草なんてそんなものと実行に移すも良し、そんなことかと気を楽に持つも良し。受け取り方は人それぞれだろうが、社会学というフィルターを通して見たモテに面白さを見いだすのも楽しいのではないだろうか。

そんな感じでコミュニケーションで抱える悩みを解き明かしていく。

 

個人的にお気に入りは、第六章『文学は誰のもの』だ。文作作品の話になると、相手にどう思われるのかが怖くて思ったことが言えないという悩みに対し、『堂々と語ることで、コミュニケーションの世界が広がる』と解決策が提示される。

いやいや、それができれば苦労はないよ……という方は、是非とも本著を読んで欲しい。作品は発表された時点で、テーマやメッセージ性といったものは読者の手に委ねられているということが社会学的に説明され、作品を読んで抱いた感想に正誤はないということがはっきりと提示されるのだ。

作者の手を離れた時点で、作品のテーマや意図というものは読者の感性に委ねられる。それもまた社会の動きや時代、国家が変われば違う形になっていく。そういう風に理解できれば、作品の感想を堂々と語れるのではないだろうか。

なにせ正解はないのだから。

本ブログも書評を好き勝手に書いているが、そこに込めた意図は読者に委ねようと思う。