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よくわかる組込みシステム開発入門 要素技術から開発プロセスまで 書評

組込みを学ぶならこの一冊

情報

著者:組込みシステム技術協会 人材育成事業本部

発行:2021年2月9日 

目次

  • 組込みプログラムの最初の一歩
  • ”思ったとおり”に動かそう
  • 組込みとタイマを実装してみよう
  • マイコンの基礎知識
  • 外部の情報を知るための周辺機能
  • リアルタイムOS
  • 組込みプログラミングでの注意事項
  • 通信サービスとネットワーク技術
  • 開発プロセス
  • 開発プロセスに関連する用語と解説

書評などなど

組込み開発とは、車や家電といったハードウェアが期待する動作を実現させるために実装するソフトウェアを開発することである。開発を進めるためには、ソフトウェアの知識は勿論のこと、ペリフェラルと呼ばれる外部の周辺機器、それとの通信などといったハードウェアの知識も要求される。

ソフトウェアだけ、ハードウェアだけの知識では、組込み開発を進めることは困難である。そこで全体を良い感じに網羅してくれる書籍が、組込み開発の導入教育では重宝されると思う。

そういった書籍を個人的には探していたが、満足のいくものはなかった。まぁ、両方を網羅しようとすれば、割くべき時間や字数は増えていくことは避けられない。結局、それぞれを網羅した書籍を二冊という形に落ち着く……とはいえ両方の繋がりが見えないと難しい。

そんな悩みを解消する上での最適解が本著なのではないか。

本著はそもそも、ETECと呼ばれる組込み開発技術者試験の運営委員会が執筆した書籍である。そのためETECの試験を受ける上で大事な要点がまとめられていると言って良い。電子書籍版の場合は、ETECを受ける優待券がついているくらいだ。

試験合格に向けた座学の一冊と要約することもできよう。しかし、この一冊で得た知見は実際の現場では最低限必要とされている知識が凝縮されている。言葉や知識、最低限のことは分かるようになっている。

 

他の組込み開発の書籍とは違う点として、第七章『組込みプログラミングでの注意事項』を上げたい。ここでは組込み開発でうっかりしていると、大きなミスに繋がりかねない懸念点を簡単にまとめている。

例えば。

組込み開発では、処理速度が重要視される。その求められる速度を実現するための一環として、コンパイラに備え付けられた最適化という機能を最大限利用する。ただこの最適化によって処理が変わってしまうことがある……こんなこと知らなければ、対処のしようがない。

上記で示したように、本著でまとめられた内容は、あくまで簡単にであるし、他にも懸念点なんて腐るほどある。それでも、これらが書いてあるというだけで大きな学びとなる。

第九章『開発プロセス』には、組込み開発を行う流れとして、V字プロセスというものが使われていて、その内訳がまとめられている。ここがかなーーりしっかりしており、一冊でここまで学べるというだけで有り難いことこの上ない。

まとめ方も、それぞれのプロセスを『新規開発』と『派生・流用開発』で分けて解説されており、MISRA-Cといったセキュアコーディングにまで言及している。何度もいうように、あくまで簡単にであるが、言及してあるというだけで前提知識がついてくる。

この一冊で満足するべきではないが、それぞれ細かな言及箇所をより深掘りしていくような学習を進めれば、ETEC試験にだって受かるのではないだろうか。ちなみにブログ主は受けたことすらないので、いずれ受けてみたい所存である。